相対取引(あいたいとりひき)とは、証券取引所などの市場を通さずに、売り手と買い手が直接取引する方法のことをいいます。
株式やFX、仮想通貨の取引などで用いられることがありますが、一体どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。また、一般的な市場取引とはどのような違いがあるのでしょうか。
相対取引について詳しく理解したい方のために、この記事では相対取引の意味や特徴、市場取引との違いを詳しく解説します。
また、実際の相対取引の進め方やメリット・デメリットについても触れているので、相対取引を検討している方は是非参考にしてみてください。
相対取引のしくみを理解することで、自身の取引スタイルに合った取引方法を選択できるようになるでしょう。市場の価格変動に左右されずに取引したい方や、大口取引を検討している方にとって、相対取引は有効な選択肢の一つとなるかもしれません。
ぜひこの記事を読んで、相対取引への理解を深めてみてください。
相対取引(あいたいとりひき)とは
相対取引とは、証券取引所などの市場を介さずに、売り手と買い手が直接交渉して価格や数量、決済方法などを決めて行う取引方法のことです。当事者同士が1対1で取引条件を決められるのが特徴で、英語では「Over The Counter (OTC)」と呼ばれることもあります。
相対取引は、非上場株式や債券など、市場での流動性が低い商品の売買に用いられることが多いです。また、大口の株式取引で市場価格への影響を避けたい場合にも利用されます。
一方、株式や通貨など流動性の高い商品は、証券取引所を通じた市場取引で売買されるのが一般的です。市場取引では需要と供給のバランスで価格が決まるのに対し、相対取引は当事者間の交渉で自由に価格を決められるという違いがあります。
以上のように、相対取引は市場外で当事者同士が直接取引を行う方法であり、市場取引とは価格決定方式や取り扱う商品などの点で異なる取引形態だと言えるでしょう。
相対取引と市場取引の違い
特徴 | 相対取引 | 市場取引 |
---|---|---|
取引方法 | 売り手と買い手が直接取引する | 証券取引所などの公開市場で取引 |
価格の決定方法 | 当事者同士で自由に決定 | 需要と供給のバランスによって自動的に決定 |
取引条件の自由度 | 高い | 低い |
流動性 | 低い | 高い |
価格の均衡性 | 当事者間での合意に依存 | 市場全体の均衡価格が生まれやすい |
取引の透明性 | 低い | 高い |
参加者の範囲 | 限定された売り手と買い手 | 不特定多数の売り手と買い手 |
取引の規模 | 小規模から大規模まで多様 | 大規模 |
価格決定の仕組みが違う
相対取引と市場取引では、価格の決定方法に大きな違いがあります。相対取引では、売り手と買い手が直接交渉し、両者の合意によって価格を決定します。
一方、市場取引では、多数の売り手と買い手が市場に参加し、需要と供給のバランスによって価格が自動的に決まります。
つまり、相対取引は当事者間の交渉が重要なのに対し、市場取引は市場の需給動向が価格に直接反映される仕組みになっています。
このため、相対取引の価格は市場価格とは異なる水準に決まることがあり、大口取引などで市場価格の影響を避けたい場合に利用されることがあります。
取り扱う資産が違う
相対取引と市場取引では、取り扱う資産の種類に違いがあります。市場取引は、株式や債券など同種の資産が大量に存在する場合に適しています。
一方、相対取引は、非上場株式や不動産など、同種の資産数が少なかったり、希少性の高い資産を売買する際に用いられます。
このように、資産の特性によって、相対取引と市場取引の使い分けがなされているのです。
市場取引では流動性が高く、価格の相場が形成されますが、相対取引では当事者間の交渉が重要になります。
相対取引のメリット
- 市場の相場に左右されず、売買価格を決定できる
- 価格や決済方法などを当事者間で自由に決められる
市場の相場に左右されず、売買価格を決定できる
相対取引では、売り手と買い手が直接交渉して売買価格を決定するため、市場の相場に左右されることなく取引を行うことができます。
例えば、市場で大量の株式を買おうとすると需要が高まり株価が上昇してしまいますが、相対取引であれば市場価格とは関係なく事前に合意した価格で一定数の株式を取得できます。
このように、相対取引は当事者間の交渉で柔軟に取引条件を決められるため、市場価格の変動リスクを回避しつつ、買い手にとっては計画的な取引が可能となるメリットがあります。
価格や決済方法などを当事者間で自由に決められる
相対取引では、売り手と買い手が直接交渉し、価格や決済方法などの取引条件を自由に決めることができます。
市場取引とは異なり、需要と供給のバランスによる価格変動の影響を受けにくいため、当事者同士が納得のいく価格で取引できるのが大きな利点です。
また、現金決済以外にも、条件付きの支払いや分割払いなど、柔軟な決済方法を選択できる点も魅力です。
このように、相対取引は当事者のニーズに合わせてカスタマイズできる自由度の高さが特徴であり、市場取引にはないメリットといえるでしょう。
相対取引のデメリット
- 取引完了までに時間がかかる
- 不当な取引が行われる恐れがある
- 当事者間の交渉が重要になる
取引完了までに時間がかかる
相対取引では、売り手と買い手が直接交渉して価格や数量、決済方法などを決めるため、市場取引と比べて取引完了までに時間がかかる傾向にあります。
特に、非上場株式の売買など稀少性の高い資産の取引では、買い手と売り手の条件が合意に至るまでに長い時間を要することがあります。
また、相対取引では当事者間の信頼関係が重要になるため、取引相手の選定や交渉にも一定の時間が必要です。
このように、相対取引は市場取引のように即時に取引を成立させることが難しいというデメリットがあるのです。
不当な取引が行われる恐れがある
相対取引は当事者同士で直接取引条件を決めるため、公正性や透明性に欠ける恐れがあります。
例えば、優越的地位にある企業が、取引先に対して不当に不利益な条件を押し付けるなどの行為が行われる可能性があります。
また、相対取引では市場価格とかけ離れた価格で取引が行われたり、取引内容が外部から見えにくいため不正な取引が行われるリスクもあります。
取引の公正性を担保するためには、取引内容を文書化したり第三者による確認を行うなど、適切な管理体制の構築が求められます。
当事者間の交渉が重要になる
相対取引では、市場の需給バランスに左右されずに価格を決められるメリットがある一方で、当事者間の交渉力が重要になるというデメリットもあります。
市場取引と異なり、相場価格が存在しないため、売り手と買い手双方にとって納得のいく適正な価格を見出すには、当事者同士が直接交渉を重ねる必要があります。
特に、非上場企業の株式など、参考となる客観的な価格が存在しない場合は、企業価値の評価をめぐって交渉が難航するリスクもあります。
したがって、相対取引では交渉力や価格決定のノウハウが求められ、経験の浅い当事者にとってはデメリットとなる可能性があるでしょう。
相対取引が用いられる場面
- M&Aにおける株式譲渡
- 非上場株式の売買
- 店頭FX取引
- 暗号資産(仮想通貨)の個人間売買
M&Aにおける株式譲渡
M&Aにおいて、非上場企業の株式を取得する際は、相対取引が用いられることが一般的です。
株式譲渡の方法には、大株主などから直接株式を買い取る相対取引の他、上場企業の株式を証券取引所等で買い入れる市場買付け、不特定多数の株主から株式を買い集める公開買付け(TOB)などがあります。
非上場株式の場合は相対取引しか選択肢がなく、株主が分散している場合は個別に交渉して同一価格で買い集めるのが一般的です。
相対取引では、当事者間で価格や条件を柔軟に決められるというメリットがあります。
非上場株式の売買
非上場株式の売買では、証券取引所などの市場を通さずに、株主と買い手が直接交渉して取引を行う相対取引が用いられます。
非上場株式は市場での売買ができないため、株主が分散している場合は個別に交渉して株式を買い集める必要があります。
売却価格は当事者間の交渉で決まりますが、税法上のルールに基づいて適正な価格で取引する必要があります。
非上場株式の相対取引では、譲渡制限の有無の確認や株式譲渡承認の手続きなども必要となります。
店頭FX取引
店頭FX取引は、FX業者と顧客が1対1で直接取引を行う相対取引です。
取引所を介さずに当事者間で価格を決定するため、FX業者間の競争によりスプレッドの縮小や取引手数料の無料化が進んでいます。
また、取引所に上場されていない通貨ペアの取り扱いも可能です。ただし、FX業者が取引の相手方となるため、FX業者の信用リスクには注意が必要です。
暗号資産(仮想通貨)の個人間売買
暗号資産の取引では、取引所を介さずに個人間で直接売買を行う相対取引が利用されることがあります。
相対取引では、当事者同士が価格や数量、決済方法などを自由に決められるメリットがある一方で、取引の安全性の面では注意が必要です。暗号資産は、ウォレット間で直接送金できる特性から、個人間の相対取引に向いていると言えます。
ただし、暗号資産の相対取引では、取引相手の信頼性が重要になります。トラブル防止のため、暗号資産に詳しい人や信頼できる相手との取引が望ましいでしょう。
また、マッチングアプリやSNSで知り合った見知らぬ相手から持ちかけられた暗号資産の相対取引は、詐欺のリスクもあるため注意が必要です。
相対取引のやり方
相対取引のやり方は、基本的に以下のようなステップで行われます。
- 売り手と買い手が直接コンタクトを取り、取引の意思を確認する
- 当事者間で価格や数量、決済方法などの取引条件について交渉し、合意する
- 合意した内容に基づき、売買契約書を作成して署名・捺印する
- 契約書に従って、代金の支払いと商品や有価証券などの受け渡しを行う
重要なのは、売り手と買い手が直接コミュニケーションを取り、互いに納得できる条件で取引を成立させることです。仲介業者を介さないため、取引の自由度は高くなります。
ただし、トラブル防止のために契約書を交わすなど、慎重に進める必要があるでしょう。
非上場株式の取引時は企業価値算定を用いて、価格決定の基準となる相場を算定する
非上場株式の取引時は市場の相場を参考にできないため、企業価値算定を行い、価格決定の基準となる相場を算出する必要があります。
企業価値算定の代表的な手法としては、インカムアプローチ、マーケットアプローチ、コストアプローチの3つがあります。
インカムアプローチは将来のキャッシュフローに着目し、マーケットアプローチは類似企業の株価を参考にし、コストアプローチは資産価値に基づいて企業価値を算定します。
これらの手法を用いて算出された企業価値を基に、当事者間で価格交渉を行い、最終的な取引価格を決定します。
まとめ
相対取引とは、取引所などの市場を介さずに、売り手と買い手が直接取引する方法のことです。価格や数量、決済方法などを当事者同士で決められるのが特徴です。
一方、市場取引では需要と供給のバランスで価格が自動的に決まります。相対取引は、大口の株式取引や、非上場株式、債券、為替などでよく用いられます。
市場価格の影響を受けにくく、希少性の高い資産の取引に適していますが、不公正な取引のリスクもあるため注意が必要です。